2012年9月16日日曜日

レクイエム/アントニオ・タブッキ

いかにも、タブッキらしい物語と言うべきか。

「インド夜想曲」や「遠い水平線」同様、主人公が街をさまよい、さまざまな人々と出会う物語。

個人的には、バーテンが、ヴー ヴ ・クリコが未亡人の名前だから好きでない(ヴー ヴは未亡人の意)という理由で、ロラン・ペリエのシャンパンを勧める場面や、ジプシーの老婆から、にせもののラコステのポロシャツを買う場面、国立美術館のバーテンダーに作ってもらった「緑の窓の夢」といわれるウォッカベースのカクテルを飲む場面が好きだ。

主人公が七月の猛暑の人気のないリスボンの街を滝のように汗を流しながらさまよい、何人かの亡霊(友人、若き日の父親など)と出会うこの物語は、残暑厳しい今頃の季節に読むには、ちょうどいいかもしれない。

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