2011年9月17日土曜日

熱を出したら…

昔、春先のころ、一人旅をしていて、旅の途中で熱をだしたことがある。

まだ雪が残っている黒部のあたりで、旅の疲れと寒さで風邪をひいてしまったものと思われる。

若かったからなのか、一人旅の引け目か、旅館のフロントに、風邪薬をくださいとも言えず、一人布団にくるまって、寒さに震えながら、ひたすら不安な夜をすごしたことがある。

朝になって、医者にも行かず、ほとんど、ふらふらになりながら、何とか、電車を乗り継いで、千葉の家にたどり着き、布団に倒れるように寝込んで、一晩中、汗をかいて、熱をさました覚えがある。

今は、医者に行くと、簡単に解熱剤をくれるけど、やはり、熱を出して、汗をかいて、体温を下げるという、昔ながらの熱のさまし方が、まっとうな風邪の直し方と個人的には思っている。

藤原新也の「ノア-動物千夜一夜物語」にも、旅の疲れが蓄積して、熱にさいなまれた作者が、数日間、ホテルの庭に面した椅子にただ座り続け、ひたすら熱が過ぎ去るのを待つ話が出てくる。

そして、熱が引いたとき、あたかも厳しい修行で自我を焼却して解脱したような状態になった作者は、ある動物と、平常時であれば、交感できなかったような不思議な出会いをする。
至福に満ちた話だ。

一方、自分はというと、やはり、自我や業を焼却しきっていないということなのだろうか。
今まで何度も熱を出し冷ましてはきたけれど、残念ながら、病みあがりでまず考えることは、美味いものを食べることと、女性のことです。

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