2011年9月11日日曜日

池澤夏樹の「春を恨んだりはしない」

有名な小説家が書いたものという点で、今回の震災について、もっともはやく出版された本ではないだろうか?

薄い本だが、著者自身、震災の全体像を描きたかったと述べているとおり、内容が多面的で、読んでいて色々な思いがよぎる本だ。

著者自身が被災地に行って感じたこと、被災者の言葉、死者に対する思い、自然と人間との関係、ボランティアの意味、エネルギー政策に関する提言、政治への期待、日本という国の局面が変わることに対する期待…

それらは、3.11以降、私たちが、日々、直接的・間接的に体験し、考えてきたことと元になるベースは変わらないはずなのだが、私自身は、あの時に感じた思いが随分と薄くなってしまっていて、かつ、日々感じていたことを忘れ、整理できていない自分に気づかされた。

土地や家を失い、故郷にも帰れず、家族や親類、友人、動物と離れ離れになった人たち、未だに仮設住宅に入れず避難所や津波の脅威にさらされる家に住む人たち、食糧配給を受けている人たちは半年経った今でもいるのだ。
その人たち一人一人の人生を想像すること、感じ取ること、そこが、まず第一歩。

特に放射能の問題については終わったわけではなく、これからも、その脅威は継続する話なのだと、再認識させられた。
(今日の東電の記者会見では、原発事故は半年経った今なお、収束に至っていない旨の見解が発表されている)

そして、取り返しがつかない状況になってしまったと感じるは、これから、私たち自身、そして私たちの子どもや孫に癌が発生する可能性に脅え、暮らしていかなければならないという重い事実だ。

それらすべてを決して忘れないこと。そして、そこから日本のこれからを考えてみようというのが、この本のテーマなのだろう。

非常に重いテーマだが、個人的にはこういう本を早く読みたかった。

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