2011年9月7日水曜日

タルコフスキーの「アンドレイ・ルブリョフ」

「アンドレイ・ルブリョフ」は、ロシア最高のイコン(聖像画)画家といわれるアンドレイ・ルブリョフを描いたアンドレイ・タルコフスキーの3作目の作品です。

この映画の最大の魅力は、物語の最後のほうで出てくる「鐘」の話だろう。

タタール人の襲撃から白痴の女性を救うため、殺人を犯してしまったルブリョフは、10年間の無言の行を自ら課し、助けた女性の裏切りもあり、絵を描くのも止めてしまう。

その後、ルブリョフは、鐘づくりの名匠である父親から鋳造の秘密を教わったという少年が、教会の巨大な鐘の鋳造に懸命に取り組む姿とそれを支える人たちを見守る。

そして、鐘の鋳造が進むうちに次第に少年は自信を喪失していくが、多くの人々が見守るなか、鐘は見事に鳴る。

歓喜に沸く人々から離れて、「本当は父親は秘密を教えてくれなかった」と告白し、一人泣き崩れる少年を抱きしめ、「もう泣くな。わたしと一緒に行こう。わたしもまた絵を描く。 おまえは鐘を作れ。」と、やさしく語るルブリョフの復活のシーンが心を打つ。

「僕の村は戦場だった」同様、タルコフスキーの映画のなかでも、ストレートなメッセージが伝わってくる例外的な作品のような気がする。


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