2011年11月20日日曜日

カフカの「城」

カフカの作品の中で、最も長い長編です。

物語は、主人公のKが深い雪に覆われた村に到着する場面からはじまる。

居酒屋で寝ていたKは、「城」の執事の息子から、自分の身分をたずねられ、「城」のベェストベェスト伯爵からの依頼でやってきた測量士と名乗る。

しかし、クラムという「城」の高官から測量士に雇うとの手紙を受け取り、指定された上司である村長を訪ねてみると、Kを雇ったのは何かの手違いであり、村は測量士を必要としていないと告げられ、代わりに小学校の小使いの役割を与えられる。

彼のそばにいるのは、「城」から派遣されてきた「蛇」のように見分けのつかない、役に立たない二人の弟子だけ。

この物語では、主人公Kの素性や行動も明らかにおかしい。
測量士と名乗ってはいるが、村には測量の道具も何も持ってきていない。プライドが高そうにみえるのに、小学校の小使いという屈辱的な仕事を、わりと簡単に引き受けてしまうところも変だ。

また、自分に仕事を与えてくれた「城」の高官クラムの愛人フリーダと関係を持ってしまう。そのくせ、彼は村での就職をあきらめてはいないし、フリーダの世話役の居酒屋の女将に対しても、議論を戦わせる。
フリーダが嫌う姉妹の家を訪れ、親しげに長々と会話をする。

嫌味な小学校の教師に散々注意されたにもかかわらず、子供たちが登校するまで寝過ごし、だらしのない格好をみせてしまう。

二人の弟子に対しては、邪魔になると深い雪の残る建物の外に追い出し、ほとんど動物並みの扱いをする。

カフカの描く「城」や村は、「審判」でも出てくるような奇妙な制度・奇妙な役割をもった人々が多く登場するが、この「城」においては、それにもまして主人公Kがおかしい。
村のほとんどの人々に悪意を持たれているのも仕方がないような気がしてくる。

もし、この物語の目的が、主人公Kを罰することにあるのだとしたら、非常に納得できてしまう。
主人公Kが近づこうとしても、いっこうに辿り着かず、遠ざかっていく「城」は、Kにとって「赦し」「恩赦」のようなものなのかもしれない。

■以下、余談です。

※ミヒャエル・ハネケ監督の『Das Schloss(城)』は、原作にかなり忠実に作られた映画(テレビ映画らしい)です。主人公Kと、フリーダ役のスザンヌ・ロタールのイメージが、私的にはピッタリです。

♪ ORIGINAL LOVEの『カフカの「城」』は、ジャズっぽいアップテンポな歌で、聴いていて気持ちがいい歌です。

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