2011年11月3日木曜日

川端康成の「掌の小説」

銀の池と緑の池、鼻血…。中学生の頃に読んだ短編「骨拾い」。

祖父の葬式に立ち会った少年の陰鬱な感情が何故か、ずっと記憶に残っていて、久々に「掌の小説」を読んでみた。

①ちょっとエロチックな情景を描いた「指輪」「滑り岩」「士族」

②差別された部落の少年少女との淫乱な思い出を描いた「二十年」

③少年少女ものの「男と女と荷車」「バッタと鈴虫」「雨傘」

④人の顔をじっと見る癖がついてしまった男と恋人の情景を描いた「日向」

⑤どこかユーモラスな雰囲気がある「帽子事件」「死顔の出来事」

122編の短編が収められているが、自分の好みで選ぶと上記の作品がいい。

やはり、川端康成は、①②のようなエロチックな風情を描いた作品が上手な気がします。

ただ、全体的にみて、歳月の傷みにさらされている作品が多いような気がします。
特にいわゆる新感覚派といわれるような詩的な感じをねらった作品は、正直、うーんという感じです。

私にとっての川端康成は、ノーベル文学賞の作家というより、
敗戦を受けて語った以下のような言葉を残した作家であることのほうが、はるかに存在感を感じます。

「私の生涯は『出発まで』もなく、そうしてすでに終わったと、今は感ぜられてならない。古の山河にひとり還ってゆくだけである。私はもう死んだ者として、あはれな日本の美しさのほかのことは、これから一行も書こうとは思わない。…」 

(「新しき幕明き」…共産主義的人間/林達夫)より

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