2017年8月29日火曜日

神様/神様2011 川上弘美 近現代作家集 III/日本文学全集28

1993年に書かれた「神様」は、熊と川原に散歩に行く物語だ。
誠実でやさしい熊と親しくなった幸せな一日。

原発事故後、その「神様」をアレンジして書かれた「神様2011」。
「神様」とストーリーは同じだが、 いたるところに、放射能の影が見える。

この作品を読んで、久々に2011年という年を思い出した。
それは、日常生活の中で、ベクレル(Bq)、マイクロシーベルト(μSv)、ミリシーベルト(mSv)という聞きなれない単位を強く意識していた1年だった。

簡易線量計を持ち、家や通り道のホットスポットを確認する。
土砂を片付けた袋の線量の高さを確認して家の庭の端っこまで持って行く。

不必要な外出を避け、外に出るときもマスクをする。

そういう日常を久々に思い出した。

でも、その日常はまだ終わってはいない。

今も福島では、線量が表示される電光板を所々で見かけるし、除染で出た汚染廃棄物が入った黒い大きなごみ袋(フレコンバック)が山積みになっている所も見かける。そして、甲状腺がんの検査。

「神様」と「神様2011」。

この二つの物語を比較すると、そこには決定的な変化があったということにやはり気づかされてしまう。あまり認めたくない事実ではあるけれど。

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