2013年3月16日土曜日

真幻魔大戦7~8/平井和正

真幻魔大戦7「サイキック・ゲーム」と8の「ソウル・イーター」

映画のレセプションと行方不明になった姉と弟を探しに、ニューヨークに来た東丈。
彼は、ここで、姉と弟の行方を捜すべく、著名な心霊能力者であるデビッド・ロートンに出会う。

丈とロートンが行う”サタン”の存在をめぐる議論は、この真幻魔大戦で描かれる唯一の宗教をめぐる考察かもしれない。

”サタン”について話し合うことになってしまったのは、丈が、タイガーマンなど、邪悪な心霊的勢力にさらされているせいなのだが、同時に、”善”のサイキック・パワーに守られていることをロートンに霊視される。

ここで、丈がきっぱりと表明する”サタン”という中世的な存在に対する嫌悪感と拒絶は、ある意味、常識的なものだが、物語としてつまらないものになってしまわないのは、ニューヨークに来てから見せるおかしなまでの東丈の強気の魅力だろう。

彼はアメリカ人たちに全く下手の姿勢をみせず、英語もしゃべることができるのに、あえてしゃべらず、かなり強気な上から目線の態度で物事に当たっていく。

その最たるものが、CIAに拉致された時の対応で、丈と連れの亜由を暴力で脅迫しようとする諜報員に対して見せる明確な拒絶と侮蔑の言動だろう。

暴力にも屈せず、敵方であるクェーサーが送り込んだチャーリーズ・エンジェルのような三人のサイキック美女の誘惑も、義妹の誘惑も軽くかわし、ガールフレンドの突然の嫌悪にも動じず、東丈は、全く超能力を行使していないにもかかわらず、ある意味、無敵の状態になっているのだ。

しかし、そんな東丈と彼を取り巻く敵と味方が搭乗したロスへと向かう飛行機が、”サタン”の攻撃に襲われ、墜落の危機に陥る。

丈が、その破滅の瞬間、ルナ姫と邂逅することで、「無印」のときの記憶を取り戻し、救世主としての力を復活させるシーンがこの物語の一つのピークをなしているのは間違いないだろう。

しかし、恐ろしいことに、作者は「無印」同様、ここで、また東丈を行方不明にしてしまうのだ。
ウーン!!

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