2013年3月10日日曜日

真幻魔大戦5~6/平井和正

東丈は、自身が書いた小説を原作とした製作費100億円もの救世主映画のレセプションに出席する。

何となく80年代のバブルっぽいエピソード。

ここで、東丈は「無印」でみせたような、聴衆を魅了するスピーチを行うが、ムーンライトを連れ去った風間亜土という美少年が映画監督として会場に登場することで、主役の座を奪われてしまう。

このムーンライトを連れ去った風間亜土という美少年や、その亜土にそっくりな蘭という妹が登場するのだが、いまひとつ人物の描き方として奥行きがない。
読者として、何となくイメージしづらいのだ。

また、この5巻では、東丈がスタイリストの中田亜由と一緒に寝るシーンがあるのだが、この女性も何となく影が薄い。
東丈がセックスの喜びを感じないように肉感的な部分を切除された女性にされてしまっている感がある。
こんなところに、この主人公の悲劇性を感じてしまうのは、私だけだろうか。

東丈が、映画の記者会見で見せる、しつこい記者の質問をかわす、意外に世慣れた場面や、事務所に突然押しかけてきた気の触れた気味の悪い男を、これまた手際よく対応する場面のほうが、意外と面白い。

反対に、6巻では、丈の弟の妻である洋子と、友達である久保陽子が、丈に化けた幻魔が夢魔として夜毎訪れ、犯されるシーンが生々しく描かれていている。

しかし、幻魔に襲われたからといって、なぜ、東丈はここまで久保陽子に冷たいのだろう。
もとはといえば、丈がずっと付き合いながらも男女の関係に踏み込まなかったことが原因なのだ。
高校時代からの付き合いであれば、もっと親身になって助けてあげてもよいのではないかと思ってしまう。

「無印」で東丈が一時期見せていた優しさや繊細さは、「真」ではあまり感じられない。
ある意味、倨傲なトーンが強いのだ。
(幻魔に付けねらわれる東丈が無意識に自分を守るべく意識を閉じていると説明できるとは思うが)

この6巻では、高次元意識体リアリー、アル・クラウドらと、意識体と化して招待されたムーン・ライトが話し合う、まるで、チェス盤をにらむ神々のような様子が描かれており、幻魔大戦の裏舞台、すなわち、「新」→「無印」→「真」と、幻魔との戦いで地球が滅亡してきた経緯と、その真の目的が説明されている。

ある意味、おかしいのは、その高次元意識体らの話す内容が非常に分かりやすいということで、人間世界の「無印」における東丈の失踪のほうが、よっぽど謎めいていて高次元っぽいということだ。

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