2012年8月21日火曜日

金曜日の別荘/モラヴィア

モラヴィア晩年の短編集。
作品中に「不貞の妻との暮らし方」という題名の短編があるが、本書は、まさに、この「不貞の妻との暮らし方」をテーマに、様々な場面を断片として切り取った作品集である。

金曜日になると愛人に会いに行く妻と、そんな妻を許容しながらも精神的に苦しむ夫、
作品を書こうと、十八歳の青年が泊まったホテルで出会った病的に男を求める夫人とその夫、
政治評論家が感じる東西冷戦の危機と、彼の妻と愛人との関係によりもたらされる内面的危機、
愛人に会いに行こうとする妻を撃ち殺す幻想を見る夫、
妻が愛人といる家に、娼婦を連れて行き、意趣返しを試みようとして失敗する夫、
浮気しているかもしれないと疑う妻に、性的ないたずら電話をして、試そうとする夫、
浮気していることを告白した妻を絞め殺しそうになる夫、
浮気な妻の行動の先手をとろうとして失敗する名チェス・プレーヤーを気取る夫、

よくも、これだけと思ってしまうぐらい、モラヴィアは、このテーマにしつこくこだわっている。
しかし、作品で描かれる愛と性から受ける印象は妙に明るくて軽い。
80年代に書かれたせいかもしれないが、90年代、'00年代の重たい空気が感じられない。

読後にふと感じたのは、日本の作家で、こんなふうに男女を描いている作家がいたはずだという漠然とした記憶だった。思い出して、自分でも意外だったが、それは、2009年に亡くなった海老沢泰久の小説であった。

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