2018年11月27日火曜日

原始人/筒井康隆

まず、原始人を主人公にした小説を書こうという作者の意欲を買いたい。
言葉は当然しゃべれないし、記憶力もほとんどない。
コンピュータで言えば、一時的に記憶するRAMの領域が著しく小さい。

一人の原始人の男が、食料を奪うため、自分の父親であることさえ認識できずに老人を棍棒で撲殺し、若い女を見れば性欲を制御できず、調達した食料も忘れ、棍棒で加減して叩き、襲いかかる。
洞窟で共に暮らす女房役的な女にも飽き、若い女を締め殺そうとした女を棍棒で叩き殺す。

川で魚を捕る手法も、棍棒で水をたたき、逃げ遅れた魚を捕るという効率の悪さ。
おまけに漁が終わった頃には、女を殺したことも忘れて、洞窟に魚を持ち帰ろうとする。

そして若い男に撲殺され魚を奪われるのだが、死んだ男にはわからない。

なんと愚かな原始人と嘲る読者に、作者は最後に真理を突きつける。
彼は無明の闇から生まれ出てきて無明の中に生き、ふたたび無明の闇の中へ去っていった。すべてわれらと何ら変ることなし。
まったく、反論すらできない実に見事な結末。

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