2015年12月12日土曜日

好色一代男・井原西鶴 島田雅彦 訳/日本文学全集11

世之介の7歳から60歳までの54年間の色事の記録。

世之介の1歳ごとの成長とともに、約2ページの好色な物語が54個あり、それを8巻でまとめている。

関係した女性の数は3,742名、男性も725名という途方もない男女関係。

ほとんどがプロの女性を相手にしてのことだが、身持ちの堅い人妻や巫女にまで手を出そうとして酷い目にあう。

あまりの放蕩ぶりに、親からも勘当され、みじめな生活を強いられた年代もあるが、三十四歳の時に、親から500億円もの遺産を相続し、以後、その資金を使いきろうと好色に邁進するが、ついに使いきれないまま、物語は終わる。

世之介が日本の津々浦々、旅をして、行く先々の色町、女性と関係する物語を読むことで、読者は、その土地の風俗事情を知ることが出来たのかもしれない。

パロディめいた物語や、旅をベースにした好色な要素は、十返舎一九の東海道中膝栗毛や、鈴木春信の春画などにも影響を与えた意外と重要な作品なのかもしれない。

1682年というと、五代将軍 徳川綱吉の時代である。
この時代、すでに町人の井原西鶴が、このような小説を書いて、庶民が喜んで読んでいたとすると、日本社会の識字率は相当高かったのだろう。

そして、平和な時代、日本人は本当に好色だったようだ。

島田雅彦の翻訳は、よくいうと読みやすく、悪くいうと印象に残らないという印象。

お金を現代の価値に換算している点は、よいと思った。

明らかに嘘の金額もあるが、太夫の指名料が十万円なんてところは、当時の金銭感覚がリアルに感じられる。

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