2014年4月2日水曜日

レイモンド・カーヴァー 作家としての人生/キャロル・スクレナカ 星野真里 訳

村上春樹の翻訳で日本でも有名なアメリカの作家 レイモンド・カーヴァー(享年五十歳)の人生を描いた作品である。

私個人は、カーヴァーは、小説よりも詩のほうがまだ好きといえる程度の読者だ。

彼の小説に見られる、幸福とも裕福ともいえない主人公たちの生活感がにじんだ雰囲気、そして、流麗な台詞もないどちらかというと朴訥な言葉づかい、物語の終わりも不条理で不安定な気持ちが残るという、その感覚がどうしてもなじめないのだ。

しかし、なにげなくこの本を本棚からとってしまったのは、カーヴァーとはどんな人物なのか、多少なりとも興味があったからに違いない。

何日かかけて苦労して読んだ。
苦労したという思いがするのは、カーヴァーの人生がまさに苦難に満ちていたものだったからかもしれない。

ハイスクール卒業後、若くして結婚し子供をもうけるが、カーヴァーも妻のメアリアンも向学心が強く、二人は働きながら大学に通おうとする。

時間とお金のない生活苦。同じく困窮する身内との金銭的なしがらみ。将来への不安。妻への嫉妬。破産。小説を改ざんする強権的な編集者。アルコール依存。離婚。肺がん。

精神的に落ち込んだ時期も少なくなく、幸福な時期は死を迎えるまでのとても短い時間しかなかった。

しかし、人生の苦難のほとんどを経験しながら、何を犠牲にしても小説を書くことを最優先にしてきたところは彼の揺るぎのない強さだったと言えるかもしれない。

というか、彼の頭の中には常に書くことへの執念、書かずにはいられないという思いがあった。
これが、小説家になる必須要件ということなのだろうか。

改めて、小説を書くのは決して楽なことではない。
そう感じさせられた。

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