2017年6月4日日曜日

鮠の子・室生犀星 片腕・川端康成 近現代作家集 II/日本文学全集27

室生犀星の「鮠の子」、川端康成の「片腕」は続けて読むと面白い。

前者は、魚に託しているが、若い女性が男たちに付きまとわれ、望まないセックスを経験し、子を宿し、それでも、生むことに懸命になる女性のリアルな半生を描いているのに対し、後者は、女性の右腕を借り受けた男が、その右腕に話しかけたり、口づけたり、一緒に寝たりするフェティシズムの物語だからだ。

どちらも、男の勝手な欲望にさらされる女性の話だが、後者のほうは、女性の顔も、半身すらも求めず、「片腕」だけを完全に愛玩物として取り扱っているところに凄みがあるかもしれない。

谷崎も、女性の美しい足の指の描写など、 フェティシズム的な作品を書いたが、その足の持ち主である女性の顔や性格も具体的なものとして書き、それだけを切り離すという“荒業”は行わなかった。

この辺りが、川端康成の特質すべき点なのかもしれないが、単に個人の性的嗜好だけの問題のような気もする。

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