2017年6月26日月曜日

幻魔大戦Deep 8 本編/平井和正

幻魔大戦Deepも、この8巻が最終巻である。

東美恵は、東丈のサイキック能力も使わない不思議な交渉力のおかげで、敵方の仲間割れに乗じ、地下牢を抜け出すことに成功するが、謎の王女に拉致されてしまい、サイキック能力のある彼女から、再び東丈を彼女の下に連れてくるようにという命令を与えられてしまう。

一方、東丈が進めていたテロリスト判別ソフトがついに完成する。
これに関する東丈のコメントが、共謀罪を彷彿とさせて面白い。 下記の“監獄社会”が“監視社会”だったら、完璧だったろう。
このソフトの恐ろしさは、犯罪者を全部弾き出すことと、犯罪予備軍まで全部洗い出すことだ。

「やめておけばよかった、とみんな後悔するだろうな。だが、テロリストが存在する限り、みんな認めるしかない。テロリストが全員拘置されたとしても、この先の監獄社会の到来を引き寄せることになるかもしれない。おれはとんでもないことをしたような気がするんだ」 
世界ががらっと変貌しますね、と青鹿秘書が感想を述べた。個人の秘密がなくなる時代の到来だとしたら、これほど息苦しい社会はないでしょうし。
善いことをしようと欲して悪事をなす、だと丈先生は淡々といった。
この8巻の本編は、東丈が雛崎ファミリーにクリスマスプレゼントを買いに街に行き、そこで50代の木村市枝に再会する場面で終わる。

東丈はここで初めて、(無印)幻魔大戦の“GENKEN”時代の記憶を取り戻すのだが、「何故、あの時失踪したのか」という彼女の切実な質問には答えられない。

ただ、今は子持ちの未亡人と結婚し、自分は仕合せだと語り、さらには、彼女に子供の有無をたずね、まだ結婚していないことを知ると、彼女に「もったいないことをしたな」と告げる。

この無神経とも思える東丈の一言を木村市枝がどう思ったかは分からない。
ただ、タクシーで去りゆく東丈が見た木村市枝は、明るくほほえんでいたというが、実際はどうなのだろう。

この章の最後は、ende? (ドイツ語)で締められている。
作者としては、幻魔大戦Deepの執筆を始めるにあたり、物語全体とあまり関連性のない、この章を、とりあえずのエンディングとして、あらかじめ用意していたのかもしれない。

しかし、作者も、このお茶を濁した終わり方ではさすがに終われないと思ったらしく、?マークのとおり、この後に、appendixとして、14篇の章が追加されている。


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