2017年6月25日日曜日

幻魔大戦Deep 6-7 /平井和正

第6巻は、2年前に亡くなった姪の東美恵の墓参りを済ませた東丈が、彼の事務所の前で秘書を襲おうとしていた江田四郎を見つけ、公園に連れ出し、自らを斉天大聖と名乗り、江田四郎がかける呪詛はすべて自分にはね来る念返しをかけたと、こっぴどく脅しつける。

一方、東丈を親分とあがめる雛崎みちるは、別世界に移る能力に目覚め、2年前に死んだはずの東美恵を自分の世界に引き連れてしまう。

東美叡と異なり、サイキック能力もない美恵は、三十年前に失踪した伯父が十七歳に若返ったこの別世界をなかなか受け入れられないが、東丈の説得により、雛崎家に居候することになる。

そして、台風の影響により頓挫するはずだったサンシャイン・ボーイとの面会は何故か実現し、東丈の口添えにより、サンシャイン・ボーイは、小学生の雛崎みちるが十七歳になるという不可能な夢をかなえることを約束する。

また、この面会に同席していた東美恵もサイキック能力に目覚め、別世界を行き来することができるようになり、もう一人の自分である東美叡との邂逅を果たし、振り子の能力も身につけることになる。


第7巻は、東美叡が追う“顔焼き男”の捜査を東美恵が振り子の力で支援するという話から始まる。そして、雛崎みちるは夢の中で、彼女が願った十七歳になる。

その彼女が十七歳として存在した世界は、1967年の(無印)幻魔大戦の世界だ。
1967年、秋。恐ろしいほどの粘着力をもって居すわった夏がようやく腰を上げて立ち去った秋だった。
この文章は、ニューヨークでの戦闘後、一人東京に戻った東丈が“GENKEN”という宗教団体を作ってゆく幻魔大戦の新たな展開のはじまりを示すような印象を与える。

ここでの驚きは、元気いっぱいだった雛崎みちるが珪肺症を患う病弱な女子高生として、違和感もなく、(無印)幻魔大戦の世界に同居しているという事実だ。この役柄を思いついた作者はすごい。

まだ悪魔化していない文芸部の久保陽子や、丈に嫉妬し攻撃をはじめる江田四郎。東三千子も登場する。

雛崎みちるは、その世界で井沢郁江と友人になり、 彼女の紹介で十七歳の東丈と会う。彼女は夢の話として、自分が元いた世界にいる十七歳だけれど五十四歳の精神を宿した東丈の姿と振り子の力を語る。

そして、雛崎みちるの出現により、(無印)幻魔大戦とよく似たその世界は、大きな変化を起こす。
まるで、(無印)幻魔大戦にも、こういう未来があり得たのだ、と作者は言いたかったのかもしれない。

しかし、この世界、最初は(無印)幻魔と相似した世界なのではと思っていたが、江田四郎が雛崎みちるに対して丈に超能力で弄ばれた事実を認めているということは、やはり、同じ世界なのだろう。つまり、東丈がルナ姫とサイボーグのベガに無理やり超能力者として覚醒させられ、1967年の夏、彼らとともに、ニューヨークで怪獣タイプの幻魔と戦った世界なのだ。

この第7巻では、“顔焼き男”の捜査を支援していた東美恵が敵方の罠にかかり、それを助けに行った東丈も一緒に地下牢に拉致されてしまう。そして、その地下で謎の外国人の王女らしき人物が登場することになる。


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