2016年6月26日日曜日

春色梅児誉美 為永春水 島本理生 訳/日本文学全集11

春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)は、明治維新の36年前、1832年に、為永春水が書いた人情本である。

物語は、唐琴屋という遊女屋の養子だったが、悪い番頭にはめられ、貧乏暮らしをしている丹次郎という男を中心に進む。

この丹次郎、金もなければ、力もない、おまけに節操もない、というないないづくしの男なのだが、不思議と女たちにはモテるという典型的な色男として描かれている。

お長というまだ幼い許嫁がいて彼に惚れているほか、深川藝者の米八からも貢がれ、別の深川藝者の仇吉とも関係している。

一方、 米八の身請けまでしたのにものに出来ない篤実な金持ちの藤兵衛と、お長を危機から救った髪結いのお由も加わり、話はもつれていく。

現代語化されたせいもあるが、今読んでも楽しめる小説になっていると思う。

まるで、一昔前のラブコメを見ているような気分になった。

女性の身分が紙切れ一枚で右から左に動いてゆくところと、最後にすべてが丸く収まるという奇跡的な 解決策が可能な男女関係はさすがに時代が違うとは思うが、男も女も恋愛には愚かであるというところは、今も昔も変わっていない。

会話のテンポよく、特に米八が浮気者の丹次郎に毒つく痴話げんか風の会話の部分は、洒落っ気があって読んでいて楽しくなる。

0 件のコメント:

コメントを投稿