2014年8月27日水曜日

終物語 上/西尾維新

終物語 上巻は、主人公である阿良々木暦が、「友達を作ると人間強度が下がる」と言うようになったきっかけとなる高校1年生の時の事件、遡って、彼が数学が得意科目となるきっかけとなった中学1年生の時の事件、さらに遡って、阿良々木暦を敵視する複雑な家庭環境の女の子が抱えた事件を、敵か味方か定かでない忍野扇と、彼女と仲が悪い羽川翼がホームズ役となり、阿良々木暦をワトソン役にして、何があったのかを解明していく推理小説仕立ての内容になっている。

忍野扇と、猫物語以降の羽川翼が、互いの推理力で対決するくだりは、読んでいて面白いものがあったが、やはり推理小説仕立てであって、推理小説とは言えないものだった。

そう思う一番の理由は、ほとんどの謎が、まるで痴呆のように記憶を喪失した阿良々木暦が語っていない部分に、真実が隠されているというオチになっているからだ。

この本で、阿良々木暦は怖いくらい重要な過去について記憶を喪失している。
それはたとえ故意でなかったとしても、彼が無意識に真実から目を背けた結果なのだろう。

そして、それはつまり、重要な真実から目をそらした結果、怪異に憑りつかれ、あるいは怪異を生み出してきた羽川、戦場ヶ原、八九寺、神原、千石といった少女たちと、いつも、彼女たちを助けていた阿良々木暦は実は同じ状況にあったということを意味する。

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