2013年2月10日日曜日

幻魔大戦 第一集(平井和正ライブラリー)

幻魔大戦 第一集(文庫本でいうと第一巻から三巻)を読んで、改めて、面白い小説だったのだなと感慨を深くした。

ヨーロッパの小国トランシルヴァニアの王女ルナが飛行機事故に遭い、海上へと落下する中、宇宙意識フロイとコンタクトし、宇宙の破壊者 幻魔が地球に侵攻することを告げられる。
フロイに助けれた彼女は、別の銀河で幻魔と戦い敗北し眠り続けるサイボーグ戦士ベガと出会い、敗残の意識の中からベガを呼び戻す。

そして、ルナとベガは、巨大なPK(念動力)を潜在させていた日本人の高校生 東丈と、テレポーテーション能力を有する黒人幼児であり、ブラックハーレムのボス、ソニー・リンクスを目覚めさせ、尖兵として送り込まれてきた幻魔 ザメディとザンビと戦うこととなる。

第一巻から三巻までは、少年向けSF小説という枠に収まっている内容だと思うが、それでも、超能力者たちの人種偏見の相克、大きな石油企業の社長が超能力者グループを支援し、その見返りに自社の防諜能力を強化しようとするあたりは、いかにも生々しい。
いわゆるジュブナイル小説の枠からはみ出ている部分といってもよいかもしれない。

しかし、今読むと何といっても登場人物が若い。
ルナは十八歳、丈は十七歳、ソニー・リンクスに至っては五歳である。
昔読んでいたころはひどく大人びた印象だった丈の姉 三千子でさえ、二十七歳の若さだ。
(ちなみに舞台は1967年)

この物語中、一番の名言は、「信は愛、信は力」というサイボーグ戦士ベガの言葉だろう。

「心の結集がなければ、いかなる強大な力もなんの用も果たさない。他人を信ずるという行為には大きな努力が要る。不断の努力による持続が不可欠なのだ。」ということばは、今聞いても確かにそうだなと思う部分がある。

幻魔大戦の物語は、これ以降、ある意味、このベガの言葉の実践の困難さが主要テーマになる。

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