2012年3月20日火曜日

屋根の破壊と空中の飛行

ミルチャ・エリアーデの「聖と俗」によると、古代宗教では、人間が死ぬと、その魂が上方の開口部を通って抜け出し、他の世界へ移行するものと信じられていた。

魂の脱出を容易にするため、死んだヨーガ行者の頭蓋を砕く習慣が、インドにはあるという。

また、ヨーロッパやアジアにおいても、死者の魂は煙突(煙を出す孔)あるいは屋根を通って上昇するという考えがあり、臨終が長引く際には、数本の屋根の梁を取り払ったり、取り壊すこともあるという。

屋根の破壊と空中の飛行という形象は、それは制約された存在から無制約の存在へ、つまり完全な自由への移行を表わす。

ふと、コンクリート鉄筋造りのマンションの場合、魂はどこを通って抜け出すのだろうと考える。

キッチンの換気扇は油だらけになりそうだし、トイレやお風呂の換気扇も、匂いや湿りがありそうで、いただけない。

耳を澄ますと、そうやって、屋根を通り抜けることが出来ない魂たちの声が換気扇の低いモーター音とともに、かすかに聞こえてきそうな。

お彼岸の今日、花粉を気にしながらも、窓をいっぱいに開けて、数時間を過ごしました。

2 件のコメント:

  1. こんばんは。
    カフカ的文章に魅了され、何度も拝読致しました。
    気が附けば、断食芸人にゆるゆると引きずられながらカフカの世界にどっぷり身を沈めつつあります。
    こうして私の内なる小さな世界を拡げてくださり誠に有難う御座います。
    貴殿の洗練された感性にいつも遠い憧れを感じます。
    どうぞ花粉飛散の被害に遭われませぬよう素敵な春をお迎え下さいませ。

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  2. Mikiさん、こんばんは。
    いつも、暖かいコメントありがとうございます。

    目がものすごくかゆいのですが、目薬を注すのが案外すきな自分に気づきつつあります。

    人間、何にでも幸せは感じられるのですね。

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