2012年3月17日土曜日

逆さまゲーム/アントニオ・タブッキ

SEVER 逆さまにすると REVES.

フランス語では「夢」の意味、スペイン語だったら「逆さま」…

フランス語とスペイン語の意味は、きっと、どこかの一点で合致するのではないだろうか。
その一点は、遠近法にしたがって画面に引かれた複数の線が交差する、あの消失点(ヴァニシング・ポイント)のようなものではないかと…

タブッキの短編小説「逆さまゲーム」を読んでいると、本当にそんな気分になる。

付き合っていた年上の女性の死をきっかけに、男は彼女の遺骸に会うため、ポルトガルに向かう。

彼女の思い出とともに登場する「逆さま」のキーワード、

遠近法で描かれたヴェラスケスの「侍女たち」、

現実も空想もすべてのものの裏側がわかっていた詩人フェルナンド・ペソア、

こうだと思っていたことが「逆さま」だと分かったとき、人は、人生がただのゲームに過ぎないのではないかという思いにかられるのだろうか。


たとえば 「逆さま」 の視点から発せられた愛の言葉は、まるで幻想的なゲームを楽しんでいるかのような印象を与える。
彼女はぼくの手をとって、言った。 
ねえ、わたしたち、いったいだれなのかしら。どこにいるのかしら。 
一生をまるで夢のように生きて。 
たとえば、今夜、あなたはわたしになったつもりで、あなたの腕のなかにあなたをしっかり抱きしめるって考えて。 
わたしも、あなたになったつもりになって、わたしの腕のなかに、しっかり、わたしを抱いているって考えるわ。

「逆さまゲーム」には、どこか人生の空しさの雰囲気もただようが、それだけではないと感じさせるのは、タブッキが、サウダージという複雑な要素が交じり合った思いを、物語のなかできちんと描いているからなのだろう。

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