2018年9月24日月曜日

佇むひと/筒井康隆

ビタミンAからZまでのエピソードをインデックス形式で並べた「ビタミン」や、情報が伝聞されていくうちにデマに代わっていくプロセスを描いた「デマ」など、実験的な内容の短編小説より、「佇むひと」のような作品のほうが個人的には好きだ。

人や犬や猫が地面に植えられた植物のような存在に変えられてしまう物語。犬や猫は食糧不足や緑化のために「犬柱」、「猫柱」にされ、社会に批判的な言動を行う人間は「人柱」にされてしまう。作家である主人公の妻も政府を批判する言動を他人に密告され、金物屋の道路ぎわに植えられてしまう。

徐々に人間らしさを失くし、植物に変わっていく妻を諦められない主人公。
言論統制、全体主義的な社会を批判している作品にも思える。

それにしても、筒井康隆は、夫婦(相思相愛の男女)の愛情関係を描くのがうまい。


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