2017年5月6日土曜日

機械 横光利一 近現代作家集 I /日本文学全集26

私は初めて横光利一の小説を読んだのだが、軽い衝撃を受けた。
昭和初期に書かれたと思われるこの小説に斬新な印象を覚えたからだ。

カフカが書いた不条理な世界の印象とよく似ていると思う。

物語は、ほぼ密室劇に近い。
ネームプレートを作る町工場が舞台で、主人公はプレートに着色させるための化学薬品の調合を担当しており、その劇薬のせいで頭脳や視力にも影響が出てきていると感じている。
その主人公を敵視するのは、先輩社員の軽部だ。
主人公を町工場の主人から赤色プレート製法を盗み出そうとしている間者だと疑い、工具を頭に落としててきたり、足元に金属の板を崩れさせたり、薬品を劇薬に取り替え、命まで狙おうとしている。

もう一人は、町工場が受注した大量の仕事をさばくため、同業の製作所から応援で働きはじめた屋敷という男。
この男は、主人公から見ても、本物の間者のような怪しい行動をする。

そして、軽部が主人公を殴り、屋敷も殴り、屋敷も軽部を殴り、ついには主人公まで殴り出す。
この三人の職工の馬鹿馬鹿しい殴り合いの果てには更なる馬鹿馬鹿しい結果が用意されている。

主人公の一見客観的に思える状況分析は、物語の中心部を必要以上に掘削し、遂には、すかすかのナンセンスなものに変えていく。

この物語の構成は、ひどく現代的なもののように感じる。

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