2018年2月18日日曜日

ゲド戦記V ドラゴンフライ アースシーの五つの物語 その1/アーシュラ・K・ル=グヴィン

作者のル=グヴィンが、まえがきで作品の解説をするという変わった本だ。

前作の「帰還」で、過去三作品で築き上げていた絶対的な英雄ゲドの幻想を破壊し、主人公たちを現代に近い世界に置き換えたことで、自分が作り出したアースシーの世界を別の視点で検証し、再構築したくなったようにも思える。

「カワウソ」は、ゲド戦記が始まる300年前、正義はなく富への欲望をむき出しにした海賊の首領とその手下の魔法使いに支配された世界を描いた物語だ。

船大工の「カワウソ」が、海賊の首領ローゼンの手下に捕まり、魔法使いゲラックに洗脳されそうになるが、鉱山で働いていた奴隷のアニエブの力を借りて危機を脱出する。
そして、追手から逃れるため、ローク島にたどり着き、”手の女”と呼ばれる魔法使いの”モエサシ”たちと出会う。

やがて、「カワウソ」(真の名はメドラ)の存在に動かされた”手の女”たちは、ロークの外の世界に平和をもたらすため、ローク島に自分たちの魔法の力を教えるための学校を作ることになり、メドラは、魔法の力を持っている生徒を探す旅に出かける。

しかし、その動きを察知したローゼンの手下の魔法使いアーリー(ゲラックの弟子)が、「カワウソ」と彼が接触した人々に襲い掛かり、ローク島に艦隊を差し向け、滅ぼそうとする...というあらすじだ。

興味深いのは、主人公は「カワウソ」なのだが、アニエブの支援と”モエサシ”たちの魔法の力、すなわち、女性の力がなければ、彼にはゲラックやアーリーとは闘う力がなかったという点だ。この物語にも、前作「帰還」のテナー、テルーの存在と同じ流れを感じる。

「ダークローズとダイヤモンド」は、商人の息子で、魔法の力がある「ダイヤモンド」が、魔法使いの道を目指そうとするが、幼い時に親しくなった魔女の娘「ローズ」との愛と自分の好きな音楽を捨てることができず、師匠も親も捨て、彼女と旅の楽師になる人生を選択するという物語だ。ここでも、「ダイヤモンド」に強い影響力を与えているのは、女性の力だ。

「地の骨」は、ゲドの師匠オジオンが、彼の師匠へレスとゴント島に起ころうとしていた大地震を食い止めた話だ。この話は、一見、女性の力は関係ないように見えるが、へレスが使った魔法が、彼の師匠アード(女性)の原始的な魔法の力だったことが明かされている。

(残りの物語は次回で)


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