2017年7月25日火曜日

動物の葬禮 富岡多惠子 近現代作家集 III/日本文学全集28

欲深の指圧師 ヨネと、その娘のサヨ子、そして、サヨ子が付き合っていたキリンと呼ばれる男の死体が、この喜劇の中心にいる。

ヨネは指圧師を名乗っているが、資格のないモグリ営業をしていて、裕福そうな支店長の奥さんや工場主の奥さんのところに出入りし、指圧をするかたわら、両家で余った古物などをもらってくる生活をしている。

一方、娘のサヨ子は水商売らしき仕事をしていて、キリンとあだ名した長身の男と一緒に暮らしていたが、生活が苦しいらしく、ヨネの家に来ては、回収してきた古物をさらっていく。

そんなある日、サヨ子がキリンの死体をヨネの家に運び込み、この家でお通夜と葬式を行うと突然宣言する。

ヨネの小心だけれども欲深な性根や、付き合っていた男の死さえ金に換えようと奮闘するサヨ子のあっけらかんさ。

無意識なうちに彼女たちの行動に表れる損得の感覚。
作者が大阪の女性だからだろうか、男が書きそうな人情とか女らしさという幻想は一切なく、その描写には容赦がない。

唯一の善人と思われる人間が死んだキリンというのもスパイスが効いている。

この作品、今、ドラマ化されてもおかしくないと思うが、キリン役は、絶対、嶋田久作だと思う。

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