2016年8月1日月曜日

一寸法師後日譚/大岡昇平 日本文学全集 18

大岡昇平が書いた昔話のパロディのような作品だ。

物語は、作者が、一寸法師を読み、打ち出の小槌で一寸法師が大きくなり、

「出世した一寸法師ほどつまらない存在はない。恐らくその妻となった宰相の姫君も、同じに感じたことはなかったろうか。」

と空想にふけるところから始まる。

一寸法師は、堀川中納言と名乗り、格好も年相応に腹も突き出た恰幅のよい姿になり、殿中の政治事にも抜け目なく立ち回りができる大人の男になっている。

そういう実務的な一寸法師に満たされぬものを感じている奥方に、入野少将という色好みの聞こえの高い若い男が言い寄る。

奥方が、昔の一寸法師の惚気話をしたところ、この少将が、是非、一寸法師になって奥方の歓心を買いたいと申し入れたため、奥方は小槌を打ち振るい、少将は本当に一寸法師になってしまう。

ここからは、 少将の悲劇(艶笑話)なのだが、大岡らしく、人が一寸ほどの大きさになると、女性の肌の表面や体毛、肌のぬくもりをどんな風に感じるのかをリアルに描いている。

やがて、事態がどうしようもなくなり、最後に本物の一寸法師である堀川中納言が解決してくれるのだが、彼が神の国への立ち去ってしまう理由を

「平安朝の感傷主義と恋愛三昧を見て、人間共に愛想を尽かし...」

と述べているところが笑える。

一寸ほどの極小の男の目を通した巨大化された女性の体との関係は、どこか卑猥なイメージを連想させる力があるのかもしれない。

倉橋由美子の 『大人のための残酷童話』でも、一寸法師を取り上げていて、こちらも、艶笑話的な内容になっているので、読み比べてみるのも面白い

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