http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0806/
原爆投下後、黒い雨が降ったことは周知の事実だが、その放射性物質を含む雨を浴びた1万3千人もの被爆者のデータが、昨年末に突然公開されたという。
何が問題かというと、以下の2点だ。
1.1万3千人もの被爆者から聞き取り調査をしたにもかかわらず、黒い雨を浴びた被爆者の健康状況、死因に関する影響について何ら研究されてこなかったこと。
2.国は平成6年に「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」を制定し、原子爆弾が投下された際、指定の区域で直接被爆した人とその人の胎児を、被爆者と認定し、医療を国の負担で無償で受けられる援護制度を開始したが、この黒い雨を浴びた被爆者に対しては、被爆の影響があったかどうか定かではないことを理由に、いまだに認定していないこと。上記1.の問題については、アメリカの研究機関ABCCが調査を行い、研究者の一人は、明らかに二次被爆の可能性を認める論文も残していたが、当時、東西冷戦の中で、アメリカを非難される材料に使われることを恐れ、闇に葬った経緯が説明されていた。アメリカは、黒い雨などによる二次被爆の可能性を執拗に否定していったという。
上記2.は、上記1.にも関係するが、そのアメリカの無責任な見解に基づき、日本国が、認定を求める被爆者たち(指定区域外の黒い雨などによる二次被爆の可能性がある被爆者)に、「じゃあ、あなたが被爆したことを証明してみなさい」という対応をとったというのだから、恐ろしい。当時の裁判の記録も読み上げていたが、これほど国家の冷血を思わせる文章はないだろう。
そういった国の対応のおかげで、全体の7%しか、被爆者に認定されていないという。
番組では、独自に、被爆した人が癌にかかるリスクを調査している大学教授の研究が紹介されていたが、それによると、癌にかかるリスクは、常識的には爆心地から同心円状に徐々に小さくなるはずが、むしろ、爆心地から北西の地域においてリスクが高くなっていたという。
それは、今回公開された黒い雨が降った地域と重なるという事実も紹介されていた。
番組最後のほうで、母の背中で自ら黒い雨を浴びた男性が、福島から避難してきた被災者に対して、「自分の子供の命を守るためには、被爆のデータを確実に記録しておくこと」を強く主張されていた。国の信頼できない対応を思うと、確かにそうだと思った。
今更の話ではあるが、この広島の黒い雨の影響を真剣に国で分析していたなら、福島原発の事故における緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用に対する意識も、全然違うものになっていたのではないだろうか。
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