シミナは、彼女の叔母であり、屋敷や周辺の村の生き物の血を吸って昔のままの若さを保っている幽霊 クリスティナと幼いうちから接触していたことにより、まるで成熟した女性のような振る舞いをする。
それは、彼女が、クリスティナの代理人の如く、主人公である画家のエゴールを手玉に取るように地下室で性的に誘惑するシーンに象徴されるが、この場面は、エリアーデが書いた小説の中で、もっとも妖しく恐ろしい場面であろう。
シミナが、そうなってしまった理由を、エリアーデは、「早熟」などという問題ではなく、次のとおり説明している。
「自然に逆らって、奇異な状態(生きた肉体のように振る舞う霊的存在)にいつまでも留まることは、周囲のすべてを腐敗させるものになる」幽霊との異常な接触に慣れたことがシミナの人間性を根底から腐敗させたというのだ。
人間性が根底から腐敗するというのは恐ろしいことに違いない。
それでも、シミナに一種の魅力を感じるのは、やはり性的な興味のせいなのだろうか?
しかし、私にはどうしてもエリアーデが単なる悪の存在として、あるいはオカルトの犠牲者として、シミナを描いているようには思えない。やはり、魅力的なのだ。
この小説は、発表当時、クリスティナとシミナの性的描写のせいで、ポルノグラフティ糾弾キャンペーンのやり玉に挙げられてしまうことになるが、この善悪定かでない読むものを惑わす感覚も、影響したのではないだろうか。
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