2012年8月24日金曜日

豹女/モラヴィア

モラヴィアの遺作となった作品。

「軽蔑」と同じく「嫉妬」をテーマにした物語だが、設定が違う。
新聞社の記者として勤める主人公と美しく奔放な妻、その新聞社の株主で主人公より社会的地位が高い男と妻の四人が、アフリカ旅行に行くことになる。

旅行中、度々、妻は、別の男と二人だけで行動をし、主人公は妻が浮気をしているのではないかという猜疑と嫉妬に苦しむ(しかし、一方でそういう状況をわざと招いている主人公もいる)。
今回は、相手の男の妻も猜疑と嫉妬に苦しむ人物として登場し、夫の浮気の意趣返しのように、主人公を誘うが、主人公はその女より、浮気をしているかもしれない妻の魅力にひかれていく。

個人的な感想をいえば、アフリカを舞台にしているところや、設定の違いはあるにせよ、ここで書かれている情景は、すでにモラヴィアのこれまでの小説で語りつくされているのではないかと感じた。
(しかし、モラヴィアにとっては、それでも書き足りなかったのだろう!)

それと、最後の結末は個人的には好きではない。
モラヴィアが過去の思い出に復讐しているかのような印象を持ってしまうからだ。

それでも、嫉妬に耐えて、最後の最後まで妻を愛した主人公の忍耐と、八十近い老作家が、これだけ、性を扱った作品を二年間かけて根気よく書き上げた体力には敬服する。

読者も、主人公同様、様々な不貞、誘惑、嫉妬へと心を揺り動かされる。そして、それに耐えなければならない。

モラヴィアの全著作がローマ教皇庁の禁書リストに掲載されているそうだが、これぐらい心の修行になる反面教師的な書物はないかもしれないと、実は密かに思っている。


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