2011年9月24日土曜日

チェレンコフ光

池澤夏樹の小説「スティル・ライフ」の冒頭、主人公がバーで一緒に飲んでいる謎の男 佐々井がグラスの中の水を見つめながら、こんな風に話し出す。

「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核とうまく衝突すると、光が出る。それが見えないかと思って」

「水の量が千トンとか百万トンといった単位で、しかも周囲が真の暗闇だと、時々はチラッと光るのが見えるはずなんだが、ここではやっぱり無理かな」

この科学と詩的なイメージが融合した世界観に引き込まれた人は多いのではないだろうか。

小説「スティル・ライフ」が書かれたのは1988年頃。
その5年前に、素粒子「ニュートリノ」を観測するための3千トンの水を蓄えたタンクを持つ装置「カミオカンデ」が岐阜県の鉱山地下に作られた。

現在では、5万トンの水を蓄えたタンクを持つパワーアップされた「スーパーカミオカンデ」が、チェレンコフ光を観測することにより、ニュートリノを検出する装置として稼動している。
(ちなみに25mプールの水量は約540トン)

そのニュートリノについて、名古屋大学など11か国の研究機関による国際研究グループが、「ニュートリノは光よりも速い」ことを示す実験結果を発表したということで、話題になっている。

アインシュタインの「特殊相対性理論」を覆す可能性があるということで、もし、これが事実だとすると、タイムマシンや異次元の存在も可能になるというのだがら、大事件である。

今後、他の研究者による検証が行われるということだが、これからの進展が非常に楽しみだ。

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