クジラたちは、漁師が《死にクジラ》と呼ぶ恰好をすることがあるが、それは他の個体から離れて孤立している成獣の場合に限られる。
《死》んだクジラは、まるで深い眠りに陥ちたもののように、表面的にはなんの努力もせずただ浮いて、海面を漂流しているようにみえる。
漁師たちによると、クジラがこういう恰好をするのは、重い凪のときとか、太陽が容赦なく照りつける日にかぎるというけれど、じつのところ、クジラ目をおそうこういった仮死状態の真の原因は、現在まだ解明されていない。
「島とクジラと女をめぐる断片」/アントニオ・タブッキ より
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