2015年7月14日火曜日

「憲法と戦争 - 日本はどこに向かうのか」/内田 樹

内田 樹さんのブログに載っていた「琉球新報」での講演内容に感銘を受けたので紹介したい。

http://blog.tatsuru.com/2015/07/13_1100.php

論点が多岐に及んでいるので、安保法制の問題だけに絞ると、以下の言葉が印象に残った(紙だったらカラーペンを引いている)。

 ・日本の三権分立が事実上、成立しておらず、とりわけ、立法府(国権の最高機関である国会)の威信が落ちている。そして、立法府の威信低下によって相対的に行政府(内閣)の威信がどんどん上がっている。

・重要法案の審議が十分であったかどうか、その指標が「審議時間」だけでしか測れない。
 今の日本人はもう数値化されたものでしかものごとの価値を判断できなくなっている。

・ 「戦争ができる国になって、アメリカのために自衛隊員が死ぬ」ことの代償として、安倍首相はアメリカから「日本が非民主的な国になる許可」を引き出すつもりでいる。
具体的には「東京裁判は間違っていた」と公言する権利、「ポツダム宣言は受け容れ難い」と公言する権利、「日本国憲法はアメリカの押しつけた醜悪な憲法 だ」と公言する権利、「日本国民には民主制も市民的自由も要らない」と公言する権利、それと引き替えなら「自衛隊員を差し出す」つもりでいる。

・ 自民党の改憲草案を読むと分かりますが、ここに描かれている国家像は近代市民革命以前のものです。

・現行憲法では99条に「公務員の憲法尊重擁護義務」が明記されています。「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とある。自民党草案にはこれがないんです。代わりに国民に憲法尊重義務が課されている。
いずれ法律や条令によって、憲法尊重擁護義務に違背した国民を処罰する気でいる。その権限を確保するために、こんな条文を入れたのです。

・改憲草案の中で一番気になるのは第九章の「緊急事態」です。これは現行憲法には存在しない条文です。そこに仔細に記してあるのは、どういう条件で憲法を停 止できるかです。憲法を停止して、内閣総理大臣が全権を持つための条件を細かく規定している。間違いなく、この憲法草案の中で一番力を入れて書かれた部分がここです。

・よく読むと分かりますけれども、いったん緊急事態を宣言したら、運用上は未来永劫に内閣総理大臣が独裁権を行使し、立法権も司法権も全部停止できるように なっています。その期間は内閣の発令する政令が法律を代行する。完全な独裁体制です。

・これほどひどい草案を掲げて安倍政権は改憲に臨もうとしているわけですけれど、これに対してメディアはほとんど効果的な抵抗を組織できていない。NHKも讀賣、朝日、産経はもう御用新聞、政府広報化している。

0 件のコメント:

コメントを投稿