久々に、溝口健二監督の「赤線地帯」を見た。
赤線とは、売春が行われていた地域の俗称のことで、その語源は、警察が地図にその地域を赤線で囲んだことに由来しているらしい。
売春禁止法施行直前の吉原の売春宿で働く娼婦の姿をリアルに描いている作品だ。
主役がいない映画で、若尾文子と京マチ子が若く美しい悪女として描かれていて、やはり目立っているが、町田博子、三益愛子、木暮実千代といった家族にも恵まれず、生活に疲れ果てた中年女性を描いているところに現実感がある。
特に、木暮実千代は、溝口監督の祇園囃子では、美しい品のある芸者を演じていたが、この作品では、眼鏡を掛け、ラーメン屋では足を開きながら幼い子供の世話をしたり、病弱な夫が自殺未遂で死にきれない中、私はどんな事があっても生き抜いてみせると意気込んだり、ひどく生活じみた演技で、逆に光っている。
(しかし、昭和30年頃は、こんなに貧乏な暮らしをしていた娼婦が多かったのだろうか)
溝口監督の作品の中では、それほどの傑作とは言えない作品だが、彼が撮った昔の日本の風俗と女性には、いつも惹きつけられる。こういう映画はもはや見ることはかなわないだろう。
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