エリアーデの幻想小説「石占い師」を読んでいたら、その昔、祖父が生きていたころ、季節外れの海辺に行って、石を拾っていたことを、ふと思い出した。
浜辺に打ち上げられた様々な石から、自分のお気に入りの石を探すのだ。
そうやって集めた石を、家の壁の脇の棚に飾ったり、床の間に飾ったりするのだが、祖父が集めた石は、ちょっと大きめのまるで小さな山脈のような形の白の斑の模様が入った濃青色の石が多かった。
私と姉は、思い思いのものを探すのだが、祖父が飾っているような綺麗な大きな石をみつけるのは、稀なことだった。我々は、大体、掌に入る程度の大きさの石を集めた。
貝のような石、木のような石、琥珀色の半透明の石、ガラス片が波に洗われ、角がとれて丸くなったような石。黄土色の煉瓦のような石。
私は、そういう、一見してすぐに綺麗だと分かる石を選んでいたが、祖父と姉は、一見、大したこともない、くすんだ色の石なのだが、水をかけると宝石のような複雑な色合いを出す石を見つけるのが得意だった。
そうやって、どのぐらい、海岸を歩いていたのだろうか。
その時は、何とも思わなかったが、そういう時間の楽しみ方を、祖父は何気なく私たち孫に伝えていたのだ。
今、そういう時間がない生活をしていると、ものすごく大事な時間だったんだという気がしてならない。
今度、海辺に行ったら、必ず、石を拾ってこよう。
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