1938年12月20日、復活祭の晩、雷に打たれた七十歳近いイタリア語とラテン語の教師。
皮膚も半分以上燃えてしまったが、男は死ぬことはなく、それどころか、四十歳近い年齢に若返ろうとしていた。
単にフィジカルな面ではなく、言語学を学んでいた男は、昔学んでいて覚えられなかった知識まで記憶にあることに驚く。
雷の莫大な電流が男の体を燃え尽くし、新たな体を組成して記憶力を増大化した。
そんな彼に、マスコミ、医療機関だけでなく、ゲシュタポなどの情報機関までが興味を抱き、彼を確保しようと動く。
男は身分を隠し、スイスに逃亡する。男の若返りは止まらず、三十歳近い年齢になっていた。
それから数年後、男は、雷に打たれ、遭難した二十五歳のドイツ人女性を助ける。彼女は、事故を契機に前世の記憶を取り戻し、助けられたときにインド中部の方言を話していた。
男は彼女とともに生活を共にし、次々と異なる時代と国語を話す彼女の言葉を記録していくが、そのうち、彼女が男とは逆に、急速に老齢化しつつあることが分かる。
前回紹介した「三美神」同様、若返りをテーマにしているが、現実と夢の行き来、輪廻転生、ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」、ヒロシマの原爆、荘子の胡蝶の夢…と取り扱っている要素が多い。
物語の最後が雰囲気のある終わり方で個人的には好きです。
エリアーデの後期の傑作のひとつだと思います。
ちなみに、コッポラは、この物語を原作に、「Youth Without Youth(邦題:コッポラの胡蝶の夢)」という映画を撮っています。
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