2020年8月31日月曜日

訴訟/カフカ 川島隆 訳 多和田葉子 編

カフカの作品は、読む度に印象ががらって変わってしまうところが本当に面白い。

この「訴訟」(今までの翻訳版では「審判」という名称が多かったと思う)という作品。

このタイトルの変更の印象のせいかもしれないが、主人公Kの言葉遣いもぞんざいな感じで訳されているせいなのか、今までは、どちらかというと、抗らえない不条理な国家権力の不気味さ、それに対する個人の無力感という印象しかなかった作品が、改めて読んでみると、まるでパロディのような印象を持った。

特に笞打人の章は、想像するだけで笑ってしまう。まるでデビット・リンチが撮るカルトチックな一場面のようだ。

カフカ自身、この作品を友人たちの前で朗読する際、笑いの発作に襲われて何度も小休止せざるを得なかったという、マックス・ブロートの証言が巻末の解説で説明されていたのも興味深い。

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