「渋谷」を読んで、心を打たれるのは、やはり「母親に罵声のひとつも浴びせて君の名は」の話である。(タイトルのつけ方がうまい)
作者が、渋谷のセンター街で、母親に「うぜえんだよ!」と罵声を浴びせる少女をみかけ、勤め先のファッションマッサージまで後をつけ、客として少女の身の上話を聞くという、フィクションなのか、ノンフィクションなのか、微妙な感じの話だ。
作者は、少女の話を聞いたあと、君にそっくりな少女を知っているよ、と言う。
その少女 エミは、明らかに写真集「千年少女」に映っている被写体の一人の少女の話だ。
その子の生い立ち、写真集のモデルに応募した動機、写真を撮ったときの洋服を選んだときの話、写真集を撮ったあとの話…
とりわけ、エミが、母親が選んだ洋服とは正反対の印象の、真赤なタンクトップと薄いピンクのチェックのスカートを着るあたりの話がとてもいい。
エミの話は、話の重さからして、おそらく実話なのだろう。
そういう背景を知らなくても、「千年少女」は、とてもきれいな写真集だ。
しかし、知ってしまうと、また、特別な思いで、その子の写真を見てしまうのも事実だ。
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