コナン・ドイルの恐怖小説を読む。
「大空の恐怖」は、大空で数多く起こっていた遭難事故の原因を突きとめるため、飛び立ち、帰らぬ人となった一人の航空士が残した文書に、空に住む未知の怪物との遭遇が書かれていた...というSFチックな小説だ。
航空機の創世記、数多く発生する遭難事故にヒントを得たものであろうが、今や、単なる移動空間と化した空に未知の世界をイメージできた時代があったのだという貴重な小説だと思う。
この命を絶った航空士が、資産家で自分の趣味の航空関係にお金をつぎ込み、人間嫌いで奇人のような振る舞いをするが、航空士としての能力はピカ一というあたりは、シャーロック・ホームズを髣髴とさせるものがある。
「皮の漏斗」は、主人公が、やはり資産家で怪奇性や神秘的な骨董を収集する友人の家に泊まった時のエピソードだ。
主人公は、友人宅で泊まった際、使用用途が分からない革製の大きな漏斗(じょうご)を枕元に置き、夢見をしてみてはどうかと誘いをかけられる。そして、主人公は夢の中で、中世時代、その漏斗が実際に使われている恐ろしい場面を目撃する..という怪奇小説的な内容だ。
途中まで、まるで、エリアーデの幻想怪奇小説を読んでいるような気分になったが、コナン・ドイルの場合、推理小説のように理路整然とした謎解きを進めているため、恐怖に必要以上に深入りしない健全な物語運びになっている。人によって好き嫌いはあると思うが、そのせいで個人的には恐怖という点では物足りないものを感じた。
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