2018年9月10日月曜日

青の洞窟の怪・ブラジル猫/コナン・ドイル

「青の洞窟の怪」は、肺結核で死んだ医師が残した手記に、治療のために訪れた高原の農場で、ローマ人が掘ったといわれるムラサキホタル石が採掘できる洞窟の噂を聞く。その洞窟の周りでは、真っ暗な晩に羊が姿を消し、洞穴に血がついた羊毛のかたまりがみつかっているという不気味な話だった。

好奇心が強い主人公は洞窟に入り込み、奥へ奥へと進むが、誤って洞窟の中の川に落ちてしまう。濡れたマッチが乾くのを待つうちに、巨大な重量と思われる生物の足音を聞く...という物語だ。

コナン・ドイルの小説は、シャーロック・ホームズの物語でもそうだが、いかに非科学的な事を実証できるか、説明できるかどうかを、かなりしつこく描写・立証していく。まるでワトソン博士のような地味でしつこい執着心を感じる。

「ブラジル猫」は、この短編集中、最もクオリティの高い掌編と言っていいだろう。
叔父のサザートン卿の遺産の第一承継者でありながら、存命しているため貧困にあえぐ青年が、ブラジル帰りの財産家の従兄弟の邸宅に招かれる。

そこで、青年は従兄弟に厚遇されるのだが、何故か、従兄弟の細君には、ひどく嫌われる。そして、ブラジルで見つけたというトミーと名付けられた美しいけれど凶暴な黒猫を見せられる。

そして、青年が借金の工面を従兄弟にお願いした夜、従兄弟は、トミーを飼っている部屋に青年を閉じ込め、檻からトミーが放たれる...という物語だ。

肉食獣の兇暴さが、くさい獣の臭いと俊敏な動きで見事に表現しており、檻の中で青年がいかに自分の身を守るかという緊張したシーンは読みごたえがある。

青年に冷たくした細君の意外な告白と、相続の意外な結末も面白かった。






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