2018年9月16日日曜日

カメロイド文部省・火星のツァラトゥストラ/筒井康隆

どちらも、地球で書かれた小説を地球外の惑星で盗作することを仕事とする男たちの話だ。筒井康隆のパロディ気質が遺憾なく発揮されていて楽しい。

「カメロイド文部省」は、小説を書くことを請われた主人公が、宇宙の僻地 カメロイド星に妻とともに赴き、地球では名作といわれる小説「レ・ミゼラブル」「罪と罰」「チャタレイ夫人の恋人」の盗作を書こうとする物語だ。
しかし、カメロイド星には、日本の文科省の役人のような通俗的道徳感に支配されている同星の文部省の役人がいて、物語の内容(悪人、殺人、不倫)が社会に好ましくないことを理由に、執筆を拒否されてしまう。
カメロイド星の悪口を書かれることを恐れ、主人公と妻を閉じ込めようとする役人たちから逃れようとする二人(というか妻がすごい)の脱出方法が笑える。

「火星のツァラトゥストラ」は、火星の植民地で、古典文献学教授 カン・トミヅカ氏(どこかで聞いた名前)がニーチェの「ツァラトゥストラ」を「誰にでも分かる哲学」風に軽い文章で翻訳し、流行らせるという物語だ。
さらに偶然見つけた「ツァラトゥストラ」風の男をアイコンに使い、「ツァラトゥストラ」をさまざまな手法により商業的に徹底して使い倒す手法は、まるで80年から90年代の日本の社会を風刺しているようにも思える。
しかし、この作品1966年に書かれているところが実はすごいことなのかもしれない。


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