今、この題名を読んで時代を感じるのは、やはり「フェミニズム」という言葉だろう。
今の潮流で言うと、耳につくのは「ジェンダー」「ジェンダーフリー」であって、「フェミニズム」という言葉は、少なくとも公の場では滅多に聞かなくなった。
女性への性差別の解放から、男女の性差別の解放に範囲が拡大されたということなのだろうか。
しかし、この作品は、1989年の作品なのだから、その違和感はしかたがない...と思いつつ、その「フェミニズム」という言葉にすら、名前負けしている感が否めない。
主人公の小説家 石坂が自分の小説のあらすじのなかで、文芸批評としてのフェミニズムを会員制ホテルに泊まったセレブ系の人々に話すところまでは、まだいいとしても、以降の殺人事件をめぐる物語は、はっきり言って、火サスの世界である。フェミニズムを主張する気の強い美女は出てくるが、タイトルにするほどの重みを感じない。
否定的な見解が続くが、推理小説としても難があるのを感じる。被害者がどんどん増えていくのは面白いが、犯人が誰かもわからないのに、事件に巻き込まれた当事者たちが宿泊を続けることや、犯人が三人もの宿泊客を殺すリスクが私には正直ピンとこなかった。
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