2012年10月8日月曜日

NHKスペシャル/除染 そして、イグネは切り倒された

福島県南相馬市の除染(放射性物質の除去)の状況を、かなり詳しく取り上げていた番組。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/1007/

事故から1年6ヶ月を過ぎた今年9月、公共施設を除き、ようやく一部の民家で除染作業が開始したという状況らしい。

何故、除染作業が進まないのか。

一つは、除染をすれば、大量の放射性廃棄物が発生するが、その仮置き場が付近の住民の反対で設置できないという問題がある。
しかし、この付近の住民の方の心配は、中間貯蔵施設、最終処分場の当てさえ決まらない現状、一度置いたら、そこが最終処分場になってしまうのではないかという心配に起因するところが大きい。

二つ目は、地元の人たちが、子供や家族の安全を考え、徹底した除染作業を行ってほしいと国に要求しても、国の試算を超えた費用が発生してしまうため、環境省が策定した除染作業のガイドラインを超えた作業については、OKを出さないことだ。

国としては、除染作業の費用は全て東京電力に請求するつもりらしいが、実質的に負担できない部分は税金でまかなうことになるため、今から、その防御腺を張っておこうという考えらしい。

番組で取り上げていたのは、例えば、屋根の除線作業。高圧洗浄機で洗い流す方法では、瓦の材質によっては十分な除染の効果があげられず、むしろ、紙タオルで瓦をふき取る方法が効果的であることが環境省でも分かっている状況らしいが、環境省が定める除染作業のガイドラインは見直すつもりはないらしい。

理由は費用がかかりすぎてしまうこと。
しかし、環境省策定の除染作業ガイドラインには、他にも問題があって、森林の除染の方法として、落ち葉や枝葉の除去が定められているらしいが、すでに放射性物質が雨で落ち葉や枝葉から洗い落とされてしまい、土に放射性物質が移動している現状が報告されていた。
作業をしても十分な除染の効果が得られず、逆に土を覆いかぶせていた遮蔽物がなくなったことで、作業後、線量が高くなってしまったところもあるらしい。

番組では、東大アイソトープ研究所の児玉さんが、情報が古い見直しが利かないガイドラインに準拠することなく、除染作業の判断は現地の判断に任せ、現場の邪魔をしないことが必要とのコメントも紹介されていた。

お子さんがいる一家では、少しでも線量を下げるため、慈しんできた庭木を伐採し、阿武隈山脈から吹き降ろす強風から家を守る「イグネ」と呼ばれる屋敷森をも切り倒していた。
しかし、その伐採にかかる費用を東電に請求しても、環境省のガイドラインには書いてない対応であることを理由に拒否したらしい。

「イグネ」を切り倒した家のご主人が、国や東電の人は、一度、福島に泊まりにくるといい。それも、家族の人たちを連れて泊まりにくるといいという趣旨のことを言っていたが、そう言いたくもなる。

こと、この問題に関しては、関係者・国民一人一人がそういう想像力を働かして自分の身になって考えないと、福島再生などというスローガンは選挙対策の民主党のマニフェスト同様としか受け取られず、地元の人の不信は強まるばかりだろう。

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