それは、語られている本が、まるで池澤家の書棚のイメージがくっきりと浮かんでしまうほど、鮮やかな好みが示されていること(ほとんど翻訳物)に加え、有名な作家を父に持ったお互いの若い頃の苦労がせきららに語られているせいもあると思う。
池澤春菜が、自分のいじめの経験を話して、
「本に触れることで救われる子、現実のつらさをやりすごせる子、壊れそうになる心をせき止めて、現実に立ち向かう力を持てる子。...だから、家にこもって本を読みふける子供を、親はできるだけ静かに見守ってほしいとわたしは思います」と述べているところや、
池澤夏樹が、自分の小説の主人公が職業を持った女性にするケースが多いのは、母や伯母が時代の制約で女性であるがゆえ活かすことができなかった能力、行動を、代わりにヒロインにさせているからだと思い至ったという告白は、特に胸に残った。
と、重い話を書いてしまったが、全体的には、池澤夏樹・春菜ワールド全開の、冒険小説、SF、ミステリー中心の本が、親子の軽妙な会話でおもしろ楽しく取り上げられていて、あっという間に読み終わった。
読後、あ、この本読んでみたい、と思うものが多かったので、これはいい書評の本だと思う。
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