2020年7月5日日曜日

香港国家安全維持法に思う

コロナ禍にある世界が自国の対応に追われる中、間隙を突くように異常なスピードで成立した「香港国家安全維持法」。

この法律は、異様な制定手続で施行された。
香港の人たちに適用される法律にも関わらず、香港の立法会(議会)を通さず、中国全人代常務委員会で6月30日に可決された。しかも同日午後11時をもって施行。
さらに驚くべきことに香港の人たちには、施行されるまでこの法律の全文は公開されなかった。

公開された法律の内容も慄然とするもので、香港の人たちが行ってきたデモ活動や中国共産党や香港政府への批判が、「国家分裂」「政権転覆」「テロ活動」「外国勢力との結託」のいずれかに該当すると判断されると、3年以上10年未満の懲役刑に処せられる。重大な犯罪と認定された場合は、終身刑または10年以上の刑を宣告される。

その判断をする機関は、香港政府が行政長官をトップとして設立する「国家安全維持委員会」であるが、この委員会には、中国政府が顧問を派遣するほか、治安維持機関として香港に新たに設置する「国家安全維持公署」という機関に監督・指導にあたらせる。
司法や警察は「国家安全維持委員会」の配下にある。

「国家安全維持公署」と香港国家安全維持法に従って職務を遂行するその職員は、香港特別行政区の管轄権の対象とはならないとある(第60条)。
つまり、香港の人々はこの機関およびその職員に何も手が出せないということだ。

この規定以外にも、「香港の他の法律と矛盾する場合、香港国家安全維持法が優先される」との規定も盛り込まれている(62条)。

香港特別行政区に居住していない外国人が起訴される可能性もある(第38条)。

他にも問題だと思われる条項が多数ある。

この法律は、香港の人たちの頭に、四六時中、拳銃を突き付けて、自分たちの思い通りに行動を強制している状況に等しい。

この21世紀に、こんな悪法によって人権が侵害される場面を目の当たりにするとは思いもよらなかった。

(参考文献)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60844530W0A620C2I00000/?n_cid=NMB0000

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53259691

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61142

https://transitjam.com/2020/06/30/national-security-law-english-translation/#_Toc44451742

1 件のコメント:

  1. 中国が新疆ウイグル自治区の人々に行っている行為は、ナチスドイツが行った行為に近いものがある。
    https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93907_1.php

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