2020年7月27日月曜日

変身(かわりみ)/カフカ/ 多和田葉子 訳

海外文学のメリットは、新訳によって、新しい文章・解釈によって生まれ変われるところにある。

このカフカの「変身」も4、5回は読んだと思うが、その新訳によって、毎回、新たな場面が印象に残る。
今回は、従来、グレゴール青年が変身してしまった「毒虫」又は「虫」という表現が、ウンゲツィーファー(生贄にできないほど汚れた動物或いは虫)と訳されたところがポイントだと思う。

それによって、家族や会社のために身を粉にして働き、過労死寸前だったかもしれないサラリーマンのグレゴール青年が「生贄」になることを自ら拒否するため、ウンゲツィーファーに変身せざるを得なかった背景が感じられ、

また、グレゴール青年が妹を偏愛したことがウンゲツィーファーに変わってしまった原因(罪)であり、その妹がグレゴール青年に死刑宣告のような言葉を突き付けるところが、罪と罰の物語として読み取れる。

もう一つ。解説で、この作品は介護の物語が読み取れるという多和田葉子の指摘は、あまりにも的確すぎると思う。(引きこもり、鬱病という解釈は池澤夏樹も言っていた)

このように、あまりにも現代社会の病癖に即して幾重にも解釈できるカフカ作品の怖ろしさを感じた。



0 件のコメント:

コメントを投稿