同僚たちも、オベリスクを建てた王とその歴史をよどみなく説明するパリスカスを奇妙に思う。しかし、パリスカスには原因が分からない。
ペルシアのカンビュセス王が、エジプトの先王の墓を暴くことを兵士たちに命じ、パリスカスも探索に加わるが、いつの間にか、たった一人で古そうな地下の墓室にいることに気づく。
そして、その墓室にいた木乃伊の顔に視線を合わせたとき、突然、パリスカスの身体に内的な異変が生じ、この木乃伊が前世の自分であったことに気づく。
前世のパリスカスは祭祀であり、当時の出来事や妻の体臭まで思い出す。
そして、パリスカスはさらに前世の記憶をたどるうちに、前世の自分もまた薄暗い小室でちょうど今起きているように一つの木乃伊(前々世の自分)と対峙している前世の自分を見つけ、慄然とする。
前世、輪廻転生を扱った作品は多いが、まるで合わせ鏡のように、その不気味な無限性を描いている点で怖い物語だ。
前世の自分の臨終の際の表現も現実感がある。
うす眼をあけて見ると、傍で妻が泣いている。 後で老人達も泣いているようだ。急に、雨雲の陰が湖の上を見る見る暗く染めて行くように、蒼い大きな翳が自分の上にかぶさって来る。目の眩むような下降感に思わず眼を閉じる―
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