2020年7月19日日曜日

対訳 ランボー詩集 フランス詩人選(1)中地義和編

ランボーの詩は、一度まとまったものを読んでみたいと思っていたので、原文付きの文庫本は、パラっとページを開いてすぐに読みたくなった。

本書の構成も分かりやすく、前期韻文詩、後期韻文詩、地獄の一季節(全文)、イリュミナシオン、そして、ランボーが最後に残したという詩「夢」、作品解説、年譜と一通りまとまっている。

原文が読めなくても、言葉の持つイメージが伝わってくるので、それを見るだけでも雰囲気を感じ取ることができる。また、特異な表現には注釈がついているで、それを読むのも面白い。

この本を読んでいて興味深かったのは、「地獄の一季節」が、ダンテの「地獄篇」に近い場面設定がされていることが分かったのと、「イリュミナシオン」が「地獄の一季節」の後に書かれたものではなく、その前後(と言っても詩作の期間はたった5年しかない訳だが)の広い期間にランボーが書き残した様々な作品を拾い集めた詩集であるという説だ。

この説は、実質的な詩作の訣別を述べている「地獄の一季節」の後に「イリュミナシオン」が詩作されたという不自然な流れを解消してくれるものだ。

(ビートルズの実質的な最後のアルバムは「Abbey Road」だが、最後のアルバムが「Let It Be」だったのと同じような感じか)

また、こうして訳者が変わっても、好きな詩は好きだ(特に「夜明け」)ということを改めて再確認できたというのもうれしい点であった。

本書には、ランボーをめぐる色々なイラストが掲載されているが、まるでサルのような姿で描かれているイラストもあり、これも、ランボーがパリの芸術家たちに悪い印象を持たれていたせいなのだろうか。(いかにも生意気そうな若僧という雰囲気は伝わってくる)

その点も読んでいて面白かった。


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