「たる工場の怪」は、蝶の採集のため、アフリカ辺りを航海していた船の船長が、水の補給のために立ち寄った島の交易所で経験した怪事件だ。
船長は、現地でたる工場を経営している交易所の支配人から、工場で立て続けに起きているの怪事件を聞く。
それは、たるのたがが盗まれないようにと警備をしていた夜警が二人とも行方不明になってしまったという事件だ。暴行の跡や血痕、島から出て行った形跡も見られない。
船長は、支配人から工場で寝ずの番をしてほしいと頼まれ、嵐の夜に耐えて監視を続けたが、工場では何事もなく夜が明ける。
しかし、熱病のためアヘンを飲んで寝込んでいた支配人の同僚が住家で肋骨を粉々に砕かれ、変死していたことが分かる。
泡を食った二人は船長の船に逃げ込むが、その海の上で偶然、怪事件を引き起こしていた原因を発見する...という物語だ。
物語自体は、それほどの恐怖や意外性はない。むしろ、アフリカの現地人の会話を、
「お世話申しましゅ」とか「できましぇん」と訳していることに驚いた。
*原文を見るとnegroと差別的な単語があったので、馬鹿にしたような言葉遣いにしたのだろうが、それにしても...という感じ。
「ジェランドの航海」は、日本の横浜を舞台にした作品だ。
大きな輸出商の一番番頭だったジェランドと同じく番頭のマキヴォイは、博打で負けがこみ、一文無しになり、小切手を振り出し、事務所の金を流用してしまう。
帳簿監査までの間に巻き返して穴埋めするつもりだったが、予想外に早く帳簿の監査が実施されることになってしまう。
腹をくくった二人は、事務所の金を持ち出し、缶詰が詰め込まれた船を購入し、夜逃げする。
しかし、海は凪の状態で遅々として進まない。そのうち、追手が二人に気づき、船を追いかける。絶望した二人は銃で自殺を図るが、その時...という物語だ。
作者としては、二人の死体を乗せた船が大海原を漂う謎を描きたかったのだろうが、多少無理があるなと思った。そんなに都合よく風が吹き出すのかとか、なぜ銃で応戦しなかったのかなど。
それと日本が舞台となっているが、「この地震国ではすべての家屋をがんじょうには作らない習慣だった」という記述ぐらいで、舞台が日本でなければならない事情はあまり見受けられない。ただイギリスの帝国主義の雰囲気はなんとなく感じる。
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