2018年10月23日火曜日

縞のある衣類箱・ポールスター号船長/コナン・ドイル

「縞のある衣類箱」は、濃霧に包まれた海で一隻の漂流船を見つけた船長とクルーが遭遇した奇譚だ。

その漂流船には大きな衣類箱と後頭部を斧のような鈍器で潰された死体だけが乗っていた。
残されていた航海日誌には、この箱が宝物箱であること、そして取り扱いに注意すべきことが書かれていていた。

船長とクルーは、唯一価値のあると思われる衣類箱を自分たちの船のキャビンに積み替えたが、その日の夜明け前、キャビンから人の叫び声が聞こえた。船長が行くと、箱の横に、この箱に強い興味を抱いていた一等航海士が倒れており、頭から血が滴っていた...という物語だ。

まるで、インディジョーンズの聖櫃のような話だが、この小説はよく出来ている話だと思う。

「ポールスター号船長」は、北極海をさまよう捕鯨船に乗り込んだ医師が遭遇した奇譚だ。
航海中、船員が子供あるいは女の泣き叫ぶ声を聞いたという怪奇現象が起きる。
しかもそれだけでなく、浮氷原に背の高い白い姿の何者かがいるのを見たという証言まで出てくる。

そして、この怪奇現象は、意思が強そうな美しい肖像画を飾っていた精神的に不安定な気性の荒い船長の事件によって半ば真相?が解明する。

コナン・ドイルは心霊現象にも興味を持っていたことがわかる小説だ。
しかし、それよりも鯨油を探し求めてイギリスの船が鯨漁をしていたことのほうが興味深かった。

実際、コナン・ドイルは半年間、捕鯨船の船医となって北氷洋を船で暮らした経験があるらしい。長い航海中、誰もいないはずの白い氷の上に何者かの存在を感じることは実際にあったのかもしれない。

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