紅葉賀は、光君が密かに関係した義母の藤壺が産んだ若君が、光君そっくりで彼の子どもであることが証明されるというのが一番の事件であるが、それよりも話として面白いのは、五十六、七の好色な性分の熟女(老婆?)の典侍(ないしのすけ)と関係をもってしまうことだ。
「流し目でじっと見つめてくるが、近くで見るとまぶたが黒ずんでげっそり落ちくぼみ、髪もぼさぼさである」この女性に、「この女はいったいどう思っているのだろうと、無視することもできなくて、裳の裾を引っ張ってみ」る光君。
彼がすごいのは、このあらゆる女性に対する並々ならぬ好奇心の強さだろう。
花宴は、桜の宴の際、光君の政敵とも言える弘徽殿女御の妹(六の君)を、強引に部屋に引きずり込み、関係してしまうという話である。
二人とも、薄々、相手が何者か感づき、特に六の君は困ったことになったと思いはするが、「恋心のわからない剛情な女だと思われたくない」と思い、特に抵抗もせず、関係を持ってしまうところが面白い。
この恋愛至上主義ともいうべき美意識にかかれば、政敵の相手と関係してしまうことも、やるせなく、切ない恋愛の旨みに変化してしまうのかもしれない。
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